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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(し)26号 決定 1953年9月01日

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

本件特別抗告の理由は、末尾添附別紙記載のとおりで、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

原決定は要するに、所論証拠調に関する異議の申立に対し、「刑事訴訟法第一四六条に所謂刑事訴追を受ける虞あるときは、証人が証人台に立った時を基準として、証人の過去に属する経験事実を述べるに当り、その内容自体に刑事訴追を受ける虞のある事実を包含する場合をいうのであって、証人が真実を述べようとしている場合に偽証罪の訴追を受ける虞ありとして、証言を拒否し得ないものと解する」と判示して右申立を棄却したものである。そして右法文にいう「刑事訴追を受ける虞あるとき」とは、証言の内容自体に刑事訴追を受ける虞のある事実を包含する場合をいうものであることは、当裁判所昭和二五年(あ)第二五〇五号同二七年八月六日大法廷判決(判例集六巻八号九七四頁以下参照)中刑訴一四六条の解釈に関する説示の趣旨に徴し明らかであるから、これにより原決定の前記判示は正当であることがわかる。しかもかかる刑訴法上の解釈が憲法三八条一項との関連において許されるものであることは、右判例の趣旨に徴し明白であるから、結局原決定には所論の如き憲法違反若しくは憲法の解釈を誤った違法はない。本件抗告はそれ故理由がない。

よって刑訴四三四条、四二六条一項により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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